「B型の工賃が安すぎる」——このことは、就労継続支援B型事業所を利用する方々やそのご家族にとって、大きな気がかりのひとつではないでしょうか。
日本のB型事業所では、工賃の低さが指摘されていますが、事業所ごとの活動次第で向上させられる可能性もあります。
今回は、海外ではどのような工夫がされているのか、日本で活かせるヒントを探ってみましょう。
◇B型の工賃、満足できていますか?
厚生労働省の令和4年度調査によると、B型事業所の平均工賃は月額約17,031円(時給換算で約243円。なお鈴の音は時給350円)です。
同調査では、約70%の利用者が現在の工賃に満足していないと回答しており、多くの利用者さんが「もっと収入を増やしたい」と考えていると分かります。
一方で、事業所側も限られた予算の中で工夫を重ねながら運営しています。
工賃を引き上げるには、事業所の収益向上や制度の見直しなど、さまざまな課題を解決しなければなりません。
◇ 日本と海外の制度の違い
福祉的就労の仕組みや賃金制度は、国によって異なります。
最低賃金の適用範囲や、企業の障害者雇用義務の有無など、日本とは違う点が多く見られます。
≪最低賃金の適用状況≫
・日本では?
日本では、B型事業所では雇用契約を結ばず、作業報酬として工賃が支払われます。
一方、A型事業所では雇用契約を結ぶため、最低賃金が適用されます。
A型とB型のどちらを利用するかは、利用者さんの障害の程度や働き方の希望、支援機関の判断、事業所の受け入れ状況によって決まります。
・海外では?
海外の国々では、最低賃金の適用状況が異なります。
ドイツやイギリス、フランスでは、基本的に障害のある方にも最低賃金が適用されますが、労働能力が著しく低い場合には適用除外となることがあります。
アメリカでは、障害のある方に特例があり、生産性が低いと判断された場合、雇用主が特別な証明書を取得すれば、最低賃金以下の賃金が認められることがあります。しかし、この制度は人権上の問題が指摘され、廃止に向けた動きが進んでいます。
≪障害者雇用率の比較≫
・日本では?
日本では、常時40人以上の従業員を雇用する企業に対し、障害のある方の雇用が義務付けられています。
雇用率は、民間企業で2.5%、国や地方公共団体で2.8%です。従業員100人以上の企業が未達成の場合、納付金を支払わなければなりません。
・海外では?
海外の障害者雇用制度は国によって異なります。
ドイツとフランスでは、従業員数20人以上の企業に、障害のある方の雇用義務があります。
雇用率は、ドイツが5%、フランスが6%です。未達成の場合には高額な罰則金を支払わなければなりません。
アメリカでは、従業員15人以上の企業に障害者雇用の促進が求められますが、法定雇用率の義務はなく、州ごとに制度が異なります。
◇ 海外の成功事例を日本で活かすには
海外の成功事例を見ると、企業の雇用義務や公的支援の活用によって、障害のある方の就労環境が整えられていることが分かります。
こうした仕組みを参考にしながら、日本のB型事業所でも実践できる工夫を考えてみましょう。
・ソーシャルビジネスの活用
イギリスでは、障害のある方が働く事業所が「エシカル消費」や「フェアトレード」の考え方を取り入れ、消費者の共感を得ることで商品の価値を高めています。
日本でも、B型事業所の商品にストーリー性を持たせ、「支援のために買う」のではなく「心惹かれる商品として選んでもらう」ことが大切かもしれません。
・企業や自治体との協力体制を強化
アメリカでは、企業が福祉事業所と連携し、共同ブランドを立ち上げるケースがあります。
また、北欧では自治体が障害のある方の作った商品を公共施設で販売し、安定した収益を確保する仕組みが整っています。
日本でも、企業や自治体と連携し、B型事業所の製品やサービスを地域で流通させる仕組みを作ることで、工賃向上につながる可能性があります。
・新しい働き方の模索
クラウドソーシングを活用することで、在宅でできる仕事の機会を増やし、多様な働き方を可能にできます。
例えば、ライティング、データ入力、イラスト制作、動画編集など、パソコンを使った仕事であれば、自宅で作業しやすく、障害のある方でも無理なく働けます。
また、ウェブ上の仕事なら地理的な制約を受けないので、応募の機会も広がり、働き方の選択肢も増えます。
日本でも、B型事業所がクラウドソーシングを活用し、利用者さんがスキルを活かして収入を得る仕組みを作ることで、新たな可能性が期待できるでしょう。
◇ 未来への一歩
B型事業所の工賃の問題は、制度だけでなく、社会全体の意識や取り組みにも関係しています。
海外の成功事例をヒントに、日本でも新しいアプローチを取り入れながら、より多くの利用者さんがやりがいを持って働ける環境を一緒に作っていきましょう。
B型事業所に関わる全ての人が、自分らしく働き、適正な対価を得られる未来を目指して、私たちにできることを少しずつ実践していきましょう。