B型事業所の現場には、何気ない日常の中で「この人、ほんとうにすごいなぁ…」と感じる瞬間がいくつもあります。
それは誰かに表彰されるようなことではなく、声高に語られることもないけれど、その人なりの努力ややさしさが、ふっと心に残るのです。
◇何度でもやってみる鹿野さん(仮名)の姿に
鹿野さんは、封入作業の途中で封がずれてしまったときも、小さくうなずくようにして、丁寧にやり直していました。
手がうまく動かない日もあるのに、諦めずにひとつひとつ仕上げていく姿は、見ているこちらが背筋を正される思いになります。
その手元には、何度目かの挑戦で、きれいに閉じられた封筒が並んでいました。
◇「ありがとう」を先に言ってくれた正木さん(仮名)
正木さんは、普段あまり自分から他人に話しかけることはありません。
でもある日、同じテーブルで作業をしていた人が困っていると、小さな声で「これ、使う?」とハサミを差し出していました。
受け取った相手に笑顔で「ありがとう」とお礼を言われると、すぐに「ありがとう」と返してくれました。
それはまるで「ありがとうの循環」のようで、あたたかい空気がふわっと広がります。
◇工夫を重ねて、自分の方法を見つけた賀川さん(仮名)
賀川さんは、作業手順を覚えるのが少し苦手でした。 でも、毎日ちょっとずつノートにイラストを描きながら、自分のペースで覚えていきました。
最初の頃はスタッフが横にいた工程も、今では自分だけでできるようになっています。
ノートのページには、その日使ったパーツの色や形が記されていて、まるで小さな“自分だけのマニュアル”のようでした。
◇“すごさ”は日常の中にある
誰かの“すごさ”は、大きな声では語られないことが多いけれど、B型事業所の現場では、そんな「すごいなぁ…」が静かに息づいています。
挑戦を続ける姿、誰かを思いやる気持ち、自分の道を見つける工夫。
どれもが、心のどこかにふっと灯りをともすような瞬間でした。
鈴の音では、そんな日常の“すごさ”に出会える時間を大切にしています。
これからも、ひとりひとりの歩みにそっと寄り添っていきます。