こんにちは、鈴の音です。
「がんばっている様子は見えるけれど、本人が何を目指しているのか、家族には分かりにくい」「うまく言葉にできないけれど、自分なりに頑張っていることを家族にも理解してほしい」そんなふうに、想いはあっても伝えきれないまま、家族がすれ違ってしまうことも少なくありません。
就労継続支援B型では、半年に一度、本人の気持ちをもとに支援計画を見直し、目標を定めています。これは制度上も定められた大切な手続きです。
今回は、その目標を立てるうえで家族の関わりがどう影響するか、そして共有することでどんな良さが生まれるのかについて、お話しします。
◇「心が動く」その先に見える目標
就労B型では、半年ごとの見直しに合わせて「目標」を記入する欄が設けられています。これは制度上も必須とされているもので、本人の生活や活動をどう支えていくか、その方向性を明確にする役割を担っています。
けれど、ただ形式的に記入するだけでは意味がありません。「これなら気持ちが動く」「頑張ってみようと思える」――そんな感覚が持てるかどうかが目標づくりの出発点です。
そのためには、日常の中でふとした会話や行動から、自分でも気づいていなかった「心が動く瞬間」に気づけるかどうかが鍵になります。そこにある小さな違和感や好奇心を見逃さずに、自分が意欲的になれる目標のヒントを見つけましょう。
なお、支援計画の作成時には、支援者と本人との面談が基本ですが、必要に応じて家族が同席することもあります。対話を通して、本人と家族がそれぞれの思いを確かめ合うきっかけになるかもしれません。
◇家族と一緒に、本人の思いを育てるための目標を
目標は、まず本人の気持ちをもとに立てます。でも、ときにそれを言葉にするのが難しいこともあります。そんなときに大切にしたいのは、家族が代わりに答えるのではなく、ゆっくり時間をかけて言葉が出るのを待つことです。代弁ではなく、対話を重ねるのです。
一方で、家庭での様子や過去の経験から、「こうなってくれたらいいな」という願いを家族が持つこともあります。ただそれは、本人にとって“過度な期待”や“プレッシャー”になるケースも。家族の意見がすべて本人にとってプラスになるとは限りません。家族といっても、別の人格なので、気持ちがズレるのは自然なことです。面談に家族が同席する際は、どちらかの気持ちだけで一方的に決めるのではなく、話し合って互いに納得できる形を探っていくことが大切です。
◇家族だからこそ、聞けないこともある
家族は一番近くで本人を見守ってきた存在ですが、距離が近いからこそ、うまく話せないこともあります。特に異性の親子であれば、プライベートな話題を避けることも。たとえ同性でも年齢や関係性によっては、言い出しにくい場面もあるかもしれません。
本人の気持ちを直接聞くのが難しいときもあります。家族だからこそ、聞けないこと、うまく言葉にできないこともあるでしょう。そんなときは、焦らずゆっくりと、自然な会話の中で気持ちが見えてくるのを待つのもひとつの方法です。
◇目標を家族と共有することが、見守りや応援につながる
支援計画に記された目標は、事業所の中だけで完結するものではありません。通所以外の時間を過ごす家庭においても、その内容が共有されていれば、家族が日々の生活の中で声をかけたり、変化に気づいたりするきっかけになります。
「最近、通所に前向きだね」「今日は集中していたみたい」といった声かけは、本人の自己肯定感を高めるきっかけにもなります。目標を共有することで、家族の関わり方も変わってきます。
◇情報は口頭だけでなく「共有しやすい形」にして残す
個別支援計画には、細かい文言や専門的な言い回しが使われることも多く、利用者さんやご家族にとっては分かりづらく感じることがあります。そのため、計画内容をわかりやすく整理し、日常の中でも見返しやすい形にしておくことが大切です。
たとえば、話し合いの内容をA4用紙1枚にまとめて、「いま目指していること」「できるようになったこと」「これからの目標」などを一覧にしておくと、本人や家族が後から振り返りやすくなります。視覚的に見える形で共有すると、日々の中での声かけや、変化に気づくきっかけにつながります。
◇鈴の音では、本人と家族、支援者が“同じ目標”を見つめられるようにしています
鈴の音では、支援計画をつくる際、本人の希望や得意なことを丁寧に聞き取りながら、ご家族との情報共有にも力を入れています。どちらかの意見だけに偏ることのないよう、「その人にとって意味のある目標とは何か」を一緒に考え、共有できる言葉で記録するよう心がけています。
家族と支援者が同じ方向を見つめていると、本人の小さな変化や頑張りにも気づきやすくなります。「できたね」と声をかけ合える関係性は、次の目標への大きな支えになります。
これからも、本人の気持ちを軸に、家族とともに歩んでいける支援を大切にしていきたいと考えています。